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故郷に誰しのべとか梅の花
昔忘れぬ香に匂ふらむ

歌の意味
荒れた故郷で、いったい誰に昔をしのべというのか、梅の花は昔を忘れない香りで咲き匂っているのだろう。
鑑賞
春歌 31

詞書は前の歌に続き「故郷梅花」
 人も住まなくなった故郷で、梅の花は誰に昔をしのばせようとして、昔と変わらぬ香りで咲いているのだろうか、と問いかける歌である。しのぶべき人のいない荒れた里に咲く花の香に、かえって深い寂しさを感じ取っている。
 類従本では二句に異同がある。

 初句「故郷に」は、荒れて人の少なくなった古い里を示す。
 二句「誰しのべとか」の「し」は強意、「か」は疑問の係助詞で、誰に昔をしのべというのかと問う。
 三句「梅の花」は、問いかけの対象として花を示す。
 四句「昔忘れぬ」は、昔を忘れないの意で、梅の変わらぬ香を言う。前歌の第三十首の「花は昔の」と響き合う。
 結句「香に匂ふらむ」は「か」の結びとして推量の「らむ」の連体形で結ぶ係り結びである。

しのぶ:過ぎ去ったことを懐かしく思い出す
ふるさと:古く荒れた里、昔なじみの地
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
年経れば宿は荒れにけり梅の花 花は昔の香に匂へども
次の歌
誰にかも昔を問はむ故郷の 軒端の梅は春をこそ知れ