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誰にかも昔を問はむ故郷の
軒端の梅は春をこそ知れ

歌の意味
誰に昔のことを尋ねたらよいのだろう。故郷の軒端の梅は、春が来たことは知っているけれど(昔のことは語ってくれない)。
鑑賞
春歌 32

詞書は前の歌に続き「故郷梅花」
 昔を知る人もいなくなった故郷で、誰に昔のことを尋ねたらよいのかと嘆く歌である。軒端の梅は春を知って咲くが、昔のことを語ってはくれない、という寂しさを詠む。賀茂真淵は合点を付し、「中さだ」の歌の中ではよいと評している。
 この歌は『続拾遺和歌集』に入集し、同集では四句に異同がある。

 初句「誰にかも」の「か」は疑問、「も」は詠嘆の係助詞で、誰にいったいの意となる。
 二句「昔を問はむ」は「か」の結びとして推量「む」の連体形で結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。
 三句「故郷の」は「故郷梅花」の題を受ける。
 四句「軒端の梅は」は、住まいの軒先に咲く梅で、かつての住人の面影を思わせる。
 結句「春をこそ知れ」は係助詞「こそ」と已然形「知れ」による係り結びで、春は知っているが昔は知らない、という含みを残す。前歌の第三十一首の「昔忘れぬ」梅に対し、ここでは昔を語らない梅を詠み、故郷梅花の三首を結ぶ。

のきば:軒の端
とふ:尋ねる、問う
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
故郷に誰しのべとか梅の花 昔忘れぬ香に匂ふらむ
次の歌
梅が枝はわが衣手に匂ひ来ぬ 花より過ぐる春の初風