古典和歌stream

この寝ぬる朝明の風に香るなり
軒端の梅の春の初花

歌の意味
一夜を寝て迎えたこの明け方の風に香っているようだ。軒端の梅の、春の初花が。
鑑賞
春歌 35

詞書は前の歌に続き「梅花風に匂ふといふ事を人々によませ侍りしついでに」
 一夜を明かした夜明けの風に乗って、軒端の梅の初花が香ってくることを詠む。まだ姿を見る前に香りで初花の開花を知るという、早春の朝の清らかな感覚を捉えている。賀茂真淵は二重の合点を付し、初句と二句は万葉集の言葉で、下の句をさらりと言い流したところが格調高いと評している。
 この歌は『新勅撰和歌集』に入集している。類従本では「春の哥」として「一本及印本所載歌」の部に収める。

 初句「この寝ぬる」は、今夜寝た、すなわち一夜を過ごしたの意で、万葉集に見える言い回しである。
 二句「朝明の風に」の「朝明」は夜明け方のことで、これも万葉集の語である。
 三句「香るなり」の「なり」は気配による推定で、香りから初花の開花を知り、ここで句切れとなる。
 四句「軒端の梅の」は、本巻の第三十二首の「軒端の梅」と同じ語で、住まいの軒先の梅を示す。
 結句「春の初花」は体言止めで、倒置により香りの主を最後に示す。前歌の第三十四首の結句「春の初風」と「春の初」まで重なり、風と花とが対をなしている。

あさけ:夜明け方、明け方
はつはな:その年初めて咲く花
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
梅が香を夢の枕に誘ひ来て 覚むる待ちける春の初風
次の歌
わが宿の梅の花咲けり春雨は いたくな降りそ散らまくも惜し