- 歌の意味
-
葛城の高間山の桜を眺めやると、夕方にかかっている雲の中に春雨が降っている。
- 鑑賞
-
春歌 52
詞書「遠山桜」
遠く葛城の高間山の桜を眺めると、夕方の山にかかる雲のように見える花に、春雨が降っている、と遠山の桜を詠む。桜を雲に見立てつつ、そこに降る春雨を添えて、霞む夕景の情趣を描く。賀茂真淵は、花を雲と見るのは後の世のことで、まだ未熟だと評している。
この歌は『新後撰和歌集』に入集し、同集では結句を「春風ぞ吹く」とする。類従本では詞書を「遠き山の櫻」とする。
初句「葛城や」の「や」は詠嘆の間投助詞で、本巻の第十一首に詠まれた葛城山を示す。
二句「高間の桜」の「高間」は葛城の主峰高間山(金剛山)で、遠山の桜を挙げる。
三句「眺むれば」は、遠くを眺めやるとの意である。
四句「夕居る雲に」の「居る」は雲がとどまることで、桜を夕方の雲に見立てている。前歌の第五十一首の「かかる白雲」を受ける。
結句「春雨ぞ降る」は「ぞ」と連体形による係り結びで、本巻の第四十一首、第四十三首と同じ結句である。
たかま:葛城の主峰高間山(金剛山)
ゐる:雲などがとどまる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
音に聞く吉野の桜咲きにけり 山の麓にかかる白雲
- 次の歌
-
雨降ると立ち隠るれば山桜 花のしづくにそぼちぬるかな