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今しはと思ひしほどに桜花
散る木のもとに日数経ぬべし

歌の意味
もう今は出立しようと思っているうちに、桜の花が散る木の下で、何日も過ごしてしまいそうだ。
鑑賞
春歌 59

詞書「屏風の絵に旅人あまた花の下に伏せる所」
 屏風に描かれた、多くの旅人が桜の木の下に伏している絵に寄せた歌である。もう出発しようと思いながらも、散る花に心を引かれて木の下で何日も過ごしてしまいそうだと、旅人の心になって詠む。ここから同じ絵に寄せた四首が続く。
 底本の四句は一字が読み取りにくく、通行の本文により「散る木のもとに」とした。

 初句「今しはと」の「し」は強意で、今はもう出立の時だと思う心を示す。
 二句「思ひしほどに」は、そう思っているうちにの意である。
 三句「桜花」は、旅人を引き留めるものとしての花を示す。
 四句「散る木のもとに」は、花の散りかかる木の下を示し、次歌の第六十首以下の「木のもとに」へと続く。
 結句「日数経ぬべし」の「ぬべし」は、きっと〜してしまうだろうの意で、前歌の第五十八首の「日数経にける」と響き合う。

こ:木
ひかず:日の数、日数
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
花を見むとしも思はで来し我ぞ 深き山路に日数経にける
次の歌
木のもとに宿りはすべし桜花 散らまく惜しみ旅ならなくに