古典和歌stream

尋ねても誰にか問はむ故郷の
花も昔の主ならねば

歌の意味
訪ねて行っても、誰に昔のことを問えばよいのだろう。故郷の花も、昔の主人のものではないのだから。
鑑賞
春歌 63

詞書「故郷花」
 古い里を訪ねても、昔のことを尋ねる相手がいないと嘆く歌である。花は咲いていても、その花のあるじはもはや昔の人ではない、と人の世の移り変わりを花に託して詠む。賀茂真淵は下の句が後の世の詠みぶりだと評している。

 初句「尋ねても」は、訪ねて行ってもの意である。
 二句「誰にか問はむ」は係助詞「か」と推量「む」の連体形による係り結びで、ここで句切れとなる。本巻の第三十二首の「誰にかも昔を問はむ」と同じ発想である。
 三句「故郷の」は、題の「故郷」を受ける。
 四句「花も昔の」の「も」は、人ばかりでなく花もの意を添える。
 結句「主ならねば」は、主人ではないのでと理由を示し、倒置となっている。

あるじ:主人、持ち主
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
木のもとの花の下臥し夜ごろ経て わが衣手に月ぞ馴れぬる
次の歌
里は荒れぬ志賀の花園そのかみの 昔の君や恋しかるらむ