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心憂き風にもあるかな桜花
咲くほどもなく散りぬべらなり

歌の意味
なんと情けない風であることか。桜の花が、咲いて間もなく散ってしまいそうだ。
鑑賞
春歌 70

詞書「花恨風」
 咲いて間もない桜を散らそうとする風を、なんと情けないものかと恨む歌である。題の「花恨風」のとおり、花の立場に立って風への恨みを率直に表している。
 類従本と定家所伝本では結句に異同がある。底本の結句は一字が読み取りにくく、通行の本文により「散りぬべらなり」とした。

 初句「心憂き」は、つらく情けないの意で、風への恨みを示す。
 二句「風にもあるかな」の「かな」は詠嘆で、ここで句切れとなる。
 三句「桜花」は、風に散らされる花を示す。
 四句「咲くほどもなく」は、咲いて間もなくの意である。
 結句「散りぬべらなり」の「べらなり」は推量の「べし」の語幹に「ら」と「なり」が付いた語で、〜しそうだの意を表す。前歌の第六十九首が風に知られずにと願ったのに対し、ここではすでに風に吹かれる花を嘆き、厭うから恨むへと心が深まっている。

ほど:時間、間
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
咲きにけりながらの山の桜花 風に知られで散りも過ぎなむ
次の歌
行きて見むと思ひしほどに散りにけり あやなの花や風立たぬまに