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行きて見むと思ひしほどに散りにけり
あやなの花や風立たぬまに

歌の意味
行って見ようと思っているうちに散ってしまった。なんとわけのわからない花よ。風も立たないうちに。
鑑賞
春歌 71

詞書「三月すゑつかた勝長寿院にまうでたりしにある僧山かげに隠れをるを見て花はと問ひしかば散りぬとなむ答へ侍りしを聞きて」
 三月の末に勝長寿院に参詣した折、山陰にいた僧に花はどうかと尋ねると、散ってしまったと答えたのを聞いて詠んだ歌である。見に行こうと思っていた矢先に、風も吹かないうちに散ってしまった花を、なんとも理不尽だと嘆いている。賀茂真淵は合点を付している。
 類従本では詞書を「三月の末かた…聞きてよめる」とする。勝長寿院は源頼朝が父義朝の菩提を弔うため鎌倉に建立した寺である。

 初句「行きて見むと」は六音の字余りで、「む」は意志を表し、見に行こうと思った心を示す。
 二句「思ひしほどに」は、そう思っているうちにの意である。
 三句「散りにけり」は、僧の言葉で知った落花への驚きを「けり」で表し、ここで句切れとなる。
 四句「あやなの花や」の「あやな」はわけがわからない、筋が通らないの意で、「や」は詠嘆である。
 結句「風立たぬまに」は、風も吹かないうちにの意で、倒置となっている。前歌の第七十首が風に散らされる花を恨んだのに対し、ここでは風もないのに散った花を理不尽だと嘆く。

まうづ:寺社に参詣する
ま:あいだ、うち
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
心憂き風にもあるかな桜花 咲くほどもなく散りぬべらなり
次の歌
桜花咲くと見しまに散りにけり 夢か現か春の山風