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山風の桜吹きまく音すなり
吉野の滝の岩もとどろに

歌の意味
山風が桜を激しく吹き巻く音がする。吉野の滝の岩もとどろくばかりに。
鑑賞
春歌 76

詞書は前の歌に続き「屏風に山中の桜の咲きたる所」
 吉野の山風が桜を吹き巻く音が、滝の岩をもとどろかすほどに響くと詠む。花を散らす風の激しさを音によって捉え、雄大な吉野の山の景を力強く描いた、作者らしい万葉調の歌である。賀茂真淵は二重の合点を付して高く評価している。

 初句「山風の」は、花を吹き散らす山風を示す。
 二句「桜吹きまく」の「吹きまく」は、風が激しく吹いて巻き上げることである。
 三句「音すなり」の「なり」は音による推定で、音から激しい風を感じ取り、ここで句切れとなる。
 四句「吉野の滝の」は、前歌の第七十五首の「滝の上の三船の山」と同じ吉野の滝を示す。
 結句「岩もとどろに」は、岩もとどろくほどにの意で、倒置となっている。前歌が風に浮いて静かに散る花を詠んだのに対し、ここでは岩もとどろく激しい風を詠み、静と動の対をなしている。

ふきまく:風が激しく吹いて巻き上げる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
滝の上の三船の山の山桜 風に浮きてぞ花も散りける
次の歌
山風の桜吹きまき散る花の 乱れて見ゆる志賀の浦波