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行く水に風の吹き入るる桜花
流れて消えぬ泡かとぞ見る

歌の意味
流れていく水に風が吹き入れる桜の花は、流れても消えることのない泡かと見える。
鑑賞
春歌 79

詞書は前の歌に続き「水辺落花」
 風が流れる水に吹き入れた桜の花びらを、流れても消えない泡かと見立てた歌である。泡ははかなく消えるものだが、花びらは消えずに流れていく、という見立ての妙がある。
 定家所伝本では二句を「風ふきいるる」とし、類従本と定家所伝本では結句に異同がある。

 初句「行く水に」は、流れていく水を示す。
 二句「風の吹き入るる」は、風が花びらを水に吹き入れるの意である。
 三句「桜花」は、水に浮かぶ花びらを示す。
 四句「流れて消えぬ」は、流れても消えないの意で、泡でありながら消えない点が趣向となる。
 結句「泡かとぞ見る」は係助詞「ぞ」と連体形「見る」による係り結びである。前歌の第七十八首が花が泡となったと詠んだのに対し、ここでは花が消えない泡に見えると詠み、同じ見立てを反転させている。

ふきいる:風が吹いて中に入れる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
山桜木々の梢に見しものを 岩間の水に泡となりぬる
次の歌
桜花散りかひ霞む春の夜の 朧月夜の加茂の川風