古典和歌stream

桜花散りかひ霞む春の夜の
朧月夜の加茂の川風

歌の意味
桜の花が散り乱れて霞んで見える春の夜の、朧月夜に吹く加茂の川風よ。
鑑賞
春歌 80

詞書は前の歌に続き「水辺落花」
 春の朧月夜、加茂川を渡る風に桜の花びらが散り乱れ、あたりが霞んで見える情景を詠む。花と霞と朧月とが溶け合う、春の夜の幻想的な美しさを描いた歌である。

 初句「桜花」は、題の落花を示す。
 二句「散りかひ霞む」の「散りかふ」は散り乱れることで、花びらが舞って霞んで見えるさまを表す。
 三句「春の夜の」は、場面が夜であることを示し、本巻の第九十七首以下の「春の夜の月」の歌を先取りしている。
 四句「朧月夜の」は、霞んでぼんやりとした月の出ている夜を示す。
 結句「加茂の川風」は体言止めで、京の加茂川を吹く風を示す。前歌の第七十八首、第七十九首の昼の水辺の落花から、夜の川辺の落花へと場面が移っている。

ちりかふ:散り乱れる
おぼろづきよ:霞んでぼんやりとした月の夜
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
行く水に風の吹き入るる桜花 流れて消えぬ泡かとぞ見る
次の歌
桜花咲きてむなしく散りにけり 吉野の山はただ春の風