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桜花咲きてむなしく散りにけり
吉野の山はただ春の風

歌の意味
桜の花は咲いて、むなしく散ってしまった。吉野の山は、今はただ春の風が吹くばかりだ。
鑑賞
春歌 81

詞書「春風」
 桜の花が咲いてはむなしく散り、花の名所吉野の山には今はただ春風が吹いているだけだと詠む。華やかな花盛りの後に残る、空虚な春の景を捉えた歌で、題の「春風」を花を失った後の寂しさの中に置いている。
 類従本では詞書を「春風をよめる」とする。底本の結句は一部の文字が読み取りにくく、類従本と定家所伝本の本文により「ただ春の風」とした。

 初句「桜花」は、散っていった花を示す。
 二句「咲きてむなしく」は、咲いたかいもなくの意で、花の命の短さを嘆く。
 三句「散りにけり」は詠嘆の「けり」で、ここで句切れとなる。
 四句「吉野の山は」は、花の名所として本巻にたびたび詠まれる吉野を示す。
 結句「ただ春の風」は体言止めで、花を失った山に春風だけが残るさまを示す。花を散らす敵として詠まれてきた風が、ここでは花の去った後の寂しさの象徴となっている。

よしの:大和国の吉野山一帯。桜の名所
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
桜花散りかひ霞む春の夜の 朧月夜の加茂の川風
次の歌
桜花うつろふ時はみ吉野の 山下風に雪ぞ降りける