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桜花うつろふ時はみ吉野の
山下風に雪ぞ降りける

歌の意味
桜の花が散りゆく時には、吉野の山から吹きおろす風に、まるで雪が降っているかのようだった。
鑑賞
春歌 82

詞書「名所落花」
 吉野の桜が散る時、山から吹きおろす風に花びらが舞うさまを、雪が降っていると見立てた歌である。名所吉野の落花を、雪の名所でもある吉野にふさわしく雪に重ねて描いている。

 初句「桜花」は、題の落花の主を示す。
 二句「うつろふ時は」の「うつろふ」は花が散る、色あせるの意である。
 三句「み吉野の」は名所吉野を示し、前歌の第八十一首から吉野の歌が続く。
 四句「山下風に」は、山から吹きおろす風を示す。
 結句「雪ぞ降りける」は係助詞「ぞ」と「けり」の連体形による係り結びで、落花を雪に見立てる。本巻の第十九首が春の雪を詠んだのに対し、ここでは花を雪に見ている。次歌の第八十三首からは「花似雪」の題で同じ見立てが続く。

うつろふ:花が散る、色あせる
やましたかぜ:山から吹きおろす風
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
桜花咲きてむなしく散りにけり 吉野の山はただ春の風
次の歌
風吹けば花は雪とぞ散りまがふ 吉野の山は春やなからむ