- 歌の意味
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春が来ると、糸鹿の山の糸桜は、風に乱れて花が散ることだ。
- 鑑賞
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春歌 92
詞書は前の歌に続き「落花をよめる」
春が来ると、糸鹿の山の枝垂れ桜が風に糸のように乱れて花を散らすさまを詠む。山の名の「糸」と糸桜の「糸」とを重ね、「乱れ」へと続ける言葉の響きに趣向がある。賀茂真淵は「是も同じ」と評し、前歌と同様に地名を巧みに用いたのは後の世の詠みぶりだとしている。
類従本では「散花」と題し、三句を「やま桜」とする。定家所伝本も同じである。糸鹿の山の桜は、『万葉集』の「足代過ぎて糸鹿の山の桜花散らずもあらなむ帰り来るまで」にも詠まれている。
初句「春来れば」は、本巻の第十五首、第三十九首と同じ詠み出しである。
二句「糸賀の山の」は紀伊国の糸鹿山で、「糸」の音が三句の「糸桜」を導く。
三句「糸桜」は枝垂れ桜のことで、垂れた枝を糸に見立てた名である。
四句「風に乱れて」の「乱れ」は「糸」の縁語で、糸が乱れるように枝が風になびくさまを示す。
結句「花ぞ散りける」は係助詞「ぞ」と「けり」の連体形による係り結びで、本巻の第八十五首と同じ結句である。前歌の第九十一首の「あらしの山」に続き、山の名を働かせた落花の歌となっている。
いとか:紀伊国の山の名、糸鹿山
いとざくら:枝垂れ桜
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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春深みあらしの山の桜花 咲くと見しまに散りにけるかな
- 次の歌
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咲けばかつうつろふ山の桜花 花のあたりに風な吹きそも