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道すがら散り交ふ花を雪と見て
やすらふほどにこの日暮らしつ

歌の意味
道すがら散り乱れる花を雪と見て、ためらって立ち止まっているうちに、この一日を暮らしてしまった。
鑑賞
春歌 95

詞書は前の歌に続き「落花をよめる」
 道を行く途中、散り乱れる花を雪と見て足を止め、ためらっているうちに一日が暮れてしまったと詠む。雪かと見まがう落花の美しさに心を奪われ、時を忘れるさまを描いた歌である。
 類従本では春部に結句を「此の日くれつつ」として収め、また「一本及印本所載歌」の部にも「此日暮しつ」として重ねて収めている。

 初句「道すがら」は、道を行く途中での意である。
 二句「散り交ふ花を」の「散り交ふ」は散り乱れることで、本巻の第八十首の「散りかひ」と同じ語である。
 三句「雪と見て」は、落花を雪と見立てる。本巻の第八十三首から第八十五首の「花似雪」の見立てを受けている。
 四句「やすらふほどに」の「やすらふ」は、ためらって立ち止まることである。
 結句「この日暮らしつ」は完了「つ」で言い切り、花に一日を費やしたことを示す。本巻の第五十四首の「今日もまた花に暮らしつ」と同じく、花に日を暮らす心を詠む。

やすらふ:ためらってとどまる
ちりかふ:散り乱れる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
春深み花散りかかる山の井は 古き清水にかはづ鳴くなり
次の歌
桜花咲ける山路や遠からむ 過ぎがてにのみ春の暮れぬる