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桜花咲ける山路や遠からむ
過ぎがてにのみ春の暮れぬる

歌の意味
桜の花の咲いている山路は遠いのだろうか。花のもとを通り過ぎかねてばかりいるうちに、春が暮れてしまった。
鑑賞
春歌 96

詞書「桜をよめる」
 桜の咲く山路は遠いのだろうかと問いかけ、行く先々の花に足を止めて通り過ぎかねているうちに、春が暮れてしまったと詠む。花に心を引かれ続けた春を振り返る歌で、長く続いた桜の歌の一群を締めくくる。賀茂真淵は下の句がまだ未熟だと評している。
 類従本では「一本及印本所載歌」の部に収める。

 初句「桜花」は、本巻の第四十五首で始まった桜の歌の一群を結ぶにあたり、同じ語で詠み出している。
 二句「咲ける山路や」の「や」は疑問の係助詞である。
 三句「遠からむ」は「や」の結びとして推量「む」の連体形で結び、ここで句切れとなる。
 四句「過ぎがてにのみ」は、通り過ぎかねてばかりの意で、花に引き留められるさまを示す。
 結句「春の暮れぬる」は完了「ぬ」の連体形で結ぶ連体止めで、春の終わりへの詠嘆を残す。桜の一群はここで終わり、次歌の第九十七首からは春の夜の月の歌に移る。

すぎがて:通り過ぎかねること
やまぢ:山の中の道
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
道すがら散り交ふ花を雪と見て やすらふほどにこの日暮らしつ
次の歌
風騒ぐをちの外山に雲晴れて 桜に曇る春の夜の月