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雁がねの帰る翼に香るなり
花を恨むる春の山風

歌の意味
北へ帰る雁の翼に花の香りが匂っているようだ。花を恨むかのように吹く春の山風によって。
鑑賞
春歌 104

詞書「屏風の絵に花散る所に雁の飛ぶを」
 屏風に描かれた、花の散る中を雁が飛ぶ絵に寄せた歌である。花を散らす春の山風が、その香りを北へ帰る雁の翼に移していると捉え、花と雁という春の景物を一つに結びつけている。賀茂真淵は四句がまだ未熟だと評している。
 類従本では詞書を「花ちれるところに雁のとぶを」とする。

 初句「雁がねの」は、本巻の第百二首の結句「帰る雁がね」を受け、帰雁の三首を結ぶ。
 二句「帰る翼に」は、北へ帰る雁の翼を示す。
 三句「香るなり」の「なり」は推定で、翼に花の香りが移っているさまを感じ取り、ここで句切れとなる。
 四句「花を恨むる」は、花を恨むかのように散らすの意で、真淵がまだ未熟と評した句である。本巻の第七十首の「花恨風」の題とは逆に、風が花を恨む形になっている。
 結句「春の山風」は体言止めで、本巻の第四十首、第七十二首と同じ結句である。

うらむ:恨みに思う
かりがね:雁、また雁の鳴き声
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
眺めつつ思ふも悲し帰る雁 行くらむ方の夕暮の空
次の歌
あをによし奈良の山なる呼子鳥 いたくな鳴きそ君も来なくに