あをによし奈良の山なる呼子鳥
いたくな鳴きそ君も来なくに
- 歌の意味
-
奈良の山にいる呼子鳥よ、そんなにひどく鳴かないでくれ。呼んでもあの人は来ないのだから。
- 鑑賞
-
春歌 105
詞書「喚子鳥」
人を呼ぶように鳴く呼子鳥に、どれほど鳴いて呼んでもあの人は来ないのだから、そんなに鳴くなと語りかける歌である。来ない人を待つ切なさを、鳥の鳴き声に重ねて率直に詠んだ万葉調の一首である。賀茂真淵は合点を付している。
底本の結句は一字が読み取りにくく、通行の本文により「君も来なくに」とした。
初句「あをによし」は「奈良」にかかる枕詞である。
二句「奈良の山なる」の「なる」は存在を表し、奈良の山にいるの意である。
三句「呼子鳥」は人を呼ぶように鳴く鳥で、カッコウのこととされる。
四句「いたくな鳴きそ」は「な〜そ」の禁止の形で、ここで句切れとなる。本巻の第二十九首の「いたくなわびそ」、第三十六首の「いたくな降りそ」と同じ形である。
結句「君も来なくに」の「なくに」は打消の「ず」のク語法に「に」が付いたもので、来ないのにと逆接の詠嘆を表す。本巻の第二十八首の「君が来まさぬ」と同じく、来ない人を待つ心を詠んでいる。
よぶこどり:人を呼ぶように鳴く鳥。カッコウとされる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
雁がねの帰る翼に香るなり 花を恨むる春の山風
- 次の歌
-
高円の尾上の雉朝な朝な 妻に恋ひつつ鳴く音悲しも