浅茅原行方も知らぬ野辺に出でて
故郷人は菫摘みけり
- 歌の意味
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浅茅の生い茂る、果ても知れない野辺に出て、故郷の人は菫を摘んだことだ。
- 鑑賞
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春歌 108
詞書「菫菜」
浅茅の生い茂る果てしない野辺に出て、古い里の人が菫を摘んでいるさまを詠む。荒れた野に咲く小さな菫と、それを摘む里人の姿に、のどかでありながらどこか寂しい晩春の情趣が漂う。
春の野で菫を摘むという題材は、『万葉集』の山部赤人の「春の野に菫摘みにと来し我ぞ野をなつかしみ一夜寝にける」以来のものである。
初句「浅茅原」は、丈の低い茅が生えた荒れた野原で、故郷の荒廃を思わせる。
二句「行方も知らぬ」は、果ても知れないの意で、野の広さを示す。
三句「野辺に出でて」は六音の字余りで、野に出ての意である。
四句「故郷人は」は、古い里に住む人を示し、本巻の故郷の題の歌々と響き合う。
結句「菫摘みけり」の「けり」は詠嘆で、里人の営みへの感慨を表す。本巻の第十七首、第十八首の若菜摘みに対し、ここでは晩春の菫摘みを詠み、春の始めと終わりの野の営みが対をなしている。
あさぢはら:丈の低い茅が生えた荒れた野原
ふるさとびと:古い里に住む人
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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おのが妻恋ひわびにけり春の野に あさる雉の朝な朝な鳴く
- 次の歌
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立ち返り見ても渡らむ大井川 川辺の松にかかる藤波