- 歌の意味
- 山吹の花のしずくに袖が濡れて、昔が思い出される玉川の里よ。
- 鑑賞
-
春歌 113
詞書「河辺款冬」
山吹の名所である井手の玉川の里で、山吹の花のしずくに袖を濡らし、昔のことがしのばれると詠む。山吹の花と清らかな玉川の流れに、古歌に詠まれた名所の昔をしのぶ心を重ねている。ここから山吹の歌が続く。賀茂真淵は四句がまだ未熟だと評している。
初句「山吹の」は、題の「款冬」すなわち山吹を示し、本巻の山吹の歌の一群を始める。
二句「花のしづくに」は、本巻の第五十三首の山桜の「花のしづく」と同じ語で、花を山吹に替えて詠む。
三句「袖濡れて」は、しずくに濡れる袖を示し、懐旧の涙をも思わせる。
四句「昔おぼゆる」の「おぼゆ」は思い出されるの意で、真淵がまだ未熟と評した句である。
結句「玉川の里」は体言止めで、山城国井手の玉川の里を示す。次歌の第百十四首以下で井手の山吹が続けて詠まれる。
たまがは:山城国井手の玉川。山吹の名所
おぼゆ:思い出される
- 作者
- 源実朝
- 出典
- 金槐和歌集
- 前の歌
- 故郷の池の藤波誰植ゑて 昔忘れぬ形見なるらむ
- 次の歌
- 山吹の花の盛りになりぬれば 井手のわたりに行かぬ日ぞなき