玉藻刈る井手の川風吹きにけり
水泡に浮かぶ山吹の花
- 歌の意味
-
玉藻を刈る井手の川に風が吹いたのだなあ。水の泡に浮かんでいる山吹の花よ。
- 鑑賞
-
春歌 116
詞書は前の歌に続き「款冬をよめる」
井手の川に風が吹き、散った山吹の花が水の泡に浮かんで流れていくさまを詠む。花びらが泡に浮かぶ情景から、風が吹いたことを知るという趣向である。賀茂真淵は合点を付している。
この歌は『続拾遺和歌集』に入集している。
初句「玉藻刈る」は前歌の第百十五首と同じ詠み出しで、井手を修飾する。
二句「井手の川風」は、井手の川を吹く風を示す。
三句「吹きにけり」は、気づきの「けり」で、風が吹いたことを知り、ここで句切れとなる。
四句「水泡に浮かぶ」の「水泡」は水の泡で、本巻の第七十八首、第七十九首の桜の泡の見立てと響き合う。
結句「山吹の花」は前歌と同じ結句である。前歌が川瀬に咲く山吹を詠んだのに対し、ここでは散って水に浮かぶ山吹を詠み、咲く花と散る花とが対をなしている。
みなわ:水の泡
たまも:美しい藻
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
玉藻刈る井手のしがらみ春かけて 咲くや川瀬の山吹の花
- 次の歌
-
声高み蛙鳴くなり井手の川 岸の山吹今は散るらむ