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おのづからあはれとも見よ春深み
散り残る岸の山吹の花

歌の意味
おのずと、しみじみいとしいものと見てほしい。春が深まって、散り残っている岸の山吹の花を。
鑑賞
春歌 123

詞書「款冬の花を折らせて人のもとにつかはすとて」
 山吹の花を折らせて人に送る際に添えた歌である。春も深まり、散り残っている岸の山吹を、おのずから心にしみるものとして見てほしいと願う。散り残った花のけなげさに、相手への思いを託している。
 類従本では詞書を「山吹の花折て…」とし、定家所伝本では四句に異同がある。

 初句「おのづから」は、自然と、ひとりでにの意である。
 二句「あはれとも見よ」は命令形で、しみじみいとしいものと見てほしいと願い、ここで句切れとなる。
 三句「春深み」は、春が深まったのでと理由を表し、本巻の第九十一首、第九十四首と同じ句である。
 四句「散り残る岸の」は八音の字余りで、散らずに残っている岸辺の花を示す。
 結句「山吹の花」は体言止めで、倒置により相手に見てほしい花を最後に示す。

ちりのこる:散らずに残る
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
わが心いかにせよとか山吹の うつろふ花にあらし立つらむ
次の歌
散り残る岸の山吹春深み この一枝をあはれといはなむ