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いづかたに行き帰るらむ春霞
立ち出でて山の端にも見えなくに

歌の意味
どちらの方へ去って帰っていくのだろう、春霞は。立ち出ていったのに、山の端にも見えないことよ。
鑑賞
春歌 127

詞書は前の歌に続き「春の暮をよめる」
 春の暮れに、春霞はどこへ帰っていくのだろうかと問いかける歌である。立ち出ていったはずの霞が山の端にも見えないと詠み、春そのものが去っていく寂しさを霞の行方に託している。
 類従本と定家所伝本では二句を「行きかくるらむ」とし、定家所伝本では結句を「見えなで」とする。底本の三句と結句は一部の文字が読み取りにくく、和歌データベースの本文により「立ち出でて」「見えなくに」とした。

 初句「いづかたに」は、どちらの方へと行方を問う。
 二句「行き帰るらむ」の「らむ」は現在推量で、どこへ帰っていくのだろうと推し量る。
 三句「春霞」は、本巻の第一首、第十首以下で春の到来のしるしとして詠まれた霞である。巻頭で春とともに現れた霞が、巻末近くで去っていくという、巻頭と巻末の呼応が見られる。
 四句「立ち出でて」は、霞が立ち出ての意で、霞の「立つ」ことを受けている。
 結句「山の端にも見えなくに」は八音の字余りで、「なくに」は打消の「ず」のク語法に「に」が付いたもので、見えないことよと詠嘆する。

やまのは:山の稜線、山が空に接する所
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
眺めこし花もむなしく散り果てて はかなく春の暮れにけるかな
次の歌
行く春の形見と思ふにあまつ空 有明の月は影も絶えにき