行く春の形見と思ふにあまつ空
有明の月は影も絶えにき
- 歌の意味
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過ぎゆく春の形見と思っていたのに、大空の有明の月は、その光も消えてしまった。
- 鑑賞
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春歌 128
詞書は前の歌に続き「春の暮をよめる」
過ぎゆく春の名残として見ていた明け方の有明の月も、その光が消えてしまったと詠む。春の形見となるものが次々に失われていく寂しさを、夜明けの空に消える月に託している。
類従本では二句を「行春をかたみとおもふを」、結句を「かげもたえけり」とし、定家所伝本では二句を「行く春のかたみと思ふ」、結句を「かげもたえにき」とする。底本は一部の文字が読み取りにくく、定家所伝本の本文によって補った。
初句「行く春の」は、過ぎ去っていく春を示す。
二句「形見と思ふに」は八音の字余りで、「に」は逆接を表し、形見と思っていたのにの意となる。
三句「あまつ空」は大空のことで、天上の広がりを示す。
四句「有明の月は」は、夜が明けても空に残っている月で、春の夜の月の歌々に続く月である。
結句「影も絶えにき」の「影」は月の光、「にき」は完了と過去で、光も消えてしまったと詠む。本巻の第九十九首が月の光だけは昔のままと詠んだのに対し、ここではその月の光も絶え、春の名残が失われていく。
ありあけ:月が空に残ったまま夜が明けること、またその頃の月
あまつそら:大空
かげ:光
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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いづかたに行き帰るらむ春霞 立ち出でて山の端にも見えなくに
- 次の歌
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朝清め格子なあけそ行く春を わが閨のうちにしばしとどめむ