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夏衣たつきの山の郭公
いつしか鳴かむ声を聞かばや

歌の意味
夏衣を裁ち着るという、そのたつきの山のほととぎすよ。早く鳴いてほしい、その声を聞きたいものだ。
鑑賞
夏歌 134

詞書「夏のはじめ」
 夏の初めに、ほととぎすの初音を待ちわびる心を詠んだ歌である。夏の訪れとともに、まだ鳴かないほととぎすの声を早く聞きたいと願う。「夏衣」から衣を「裁ち着る」と言いかけて山の名へ続ける趣向で、夏部に続くほととぎすの歌の先頭に立つ。
 賀茂真淵は合点を付し、『万葉集』で「妹が袖まき」から「巻来の山」へ続けた類のように「夏衣たちき」と続けるのはよいが、「たつき」と続けるのはよくないとし、作者はもと「立ちき」と書いたのを後に誤って「たつき」と書いたのだろうと評している。類従本と定家所伝本では二句を「たつたの山の」とする。

 初句「夏衣」は夏に着る薄い衣で、衣を「裁つ」「着る」ことから次の句を導く。同じ初句は本巻の第百四十二首にも見え、夏の始まりを衣で示す点で対応している。
 二句「たつきの山の」は、衣を裁ち着る意と山の名を掛けた掛詞である。山の所在ははっきりしない。
 三句「郭公」は夏を代表する鳥で、ここで呼びかけるように体言で据える。以後、夏部にはほととぎすを詠む歌が多く続く。巻第一の第百三十一首が春のうちにほととぎすを聞かなかったと詠んだのを受け、夏に入ってその声を待つ歌となっている。
 四句「いつしか鳴かむ」の「いつしか」は早くの意で、「む」はここでは願望を含んだ推量を表す。
 結句「声を聞かばや」の「ばや」は自己の願望を表す終助詞で、聞きたいものだと結ぶ。

なつごろも:夏に着る薄い衣
たつき:衣を裁ち着る意と、山の名「たつきの山」を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
惜しみこし花の袂も脱ぎかへつ 人の心ぞ夏にはありける
次の歌
春過ぎて幾日もあらねどわが宿の 池の藤波うつろひにけり