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わが宿の垣根に咲ける卯の花の
憂きことしげき世にこそありけれ

歌の意味
わが家の垣根に咲いている卯の花がびっしりと茂るように、つらいことの多い世の中であることだ。
鑑賞
夏歌 136

詞書「卯花」
 自邸の垣根に咲く卯の花の茂るさまから、つらいことの多い世の中への嘆きへと転じた歌である。初夏の白い花の景をきっかけに、世を憂える作者の心情が表れている。
 類従本ではこの歌を「一本及印本所載歌」の部に収める。なお参照した底本の本文では三句が「うの花」となっており、句の字数から「の」を補って解した。

 初句「わが宿の」は前歌の第百三十五首の三句と同じ語で、わが家の庭の景を引き継いでいる。
 二句「垣根に咲ける」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、垣根に咲いている卯の花を示す。
 三句「卯の花の」までの上の句は序詞で、「う」の音を重ねて次の「憂き」を導く。
 四句「憂きことしげき」の「しげき」は、卯の花が茂る意とつらいことが多い意を掛けた掛詞である。
 結句「世にこそありけれ」は、係助詞「こそ」の結びで「けれ」と已然形で結び、世の中のつらさを改めて嘆く。次歌の第百三十七首も卯の花から「憂き」を導いており、二首が対をなしている。

うのはな:ウツギの花。初夏に白い花をつける
しげし:卯の花が茂る意と、つらいことが多い意を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
春過ぎて幾日もあらねどわが宿の 池の藤波うつろひにけり
次の歌
神祭る卯月になれば卯の花の 憂きことの葉の数やまさらむ