古典和歌stream

五月闇おぼつかなきにほととぎす
深き峰より鳴きて出づなり

歌の意味
五月の闇夜で何もはっきりしないなかに、ほととぎすが奥深い峰から鳴きながら出てくるようだ。
鑑賞
夏歌 145

詞書「深夜郭公」
 梅雨のころの真っ暗な夜に、奥深い峰からほととぎすが鳴きながら出てくる様子を、声だけで感じ取った歌である。姿の見えない闇の中で、声の動きによって鳥の飛ぶさまを捉えている。

 初句「五月闇」は、梅雨のころの曇りがちな夜の暗さをいう。次歌の第百四十六首、第百四十七首も同じ「五月闇」で始まり、「深夜郭公」の三首を貫いている。
 二句「おぼつかなきに」は、ぼんやりとしてはっきりしないなかにの意で、暗さを示す。
 三句「ほととぎす」は、闇の中で声だけが聞こえる鳥として据えられる。
 四句「深き峰より」は、奥深い峰からの意で、題の「深夜」の深さとも響き合う。
 結句「鳴きて出づなり」の「なり」は音による推定で、声によって鳥が出てきたことを知る。本巻の第百五十一首にも同じ結句があり、ほととぎすの出現を声で捉える趣向が共通している。

さつきやみ:梅雨のころの夜の暗さ
いづ:出る
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
夕闇のたづたづしきに郭公 声うら悲し道やまどへる
次の歌
五月闇神奈備山の時鳥 妻恋ひすらし鳴く音悲しも