- 歌の意味
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うたた寝をしている夜の衣に香ってくる。もの思いにふける家の、軒端の橘の花が。
- 鑑賞
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夏歌 161
詞書「盧橘薫夜衣」
もの思いにふけりながらうたた寝をしている夜の衣に、軒端の橘の香りがしみてくると詠んだ歌である。ほのかな香りと物思いとを重ね、夏の夜の静かな情趣を描いている。
なお参照した底本の本文では二句に読み取れない字があり、定家所伝本の「よるのころもに」によって補った。
初句「うたた寝の」は、寝床に入らずついうとうとと寝ることをいう。本巻の第百七十二首も「うたた寝の夜の衣に」と同じ語句を用いており、香りと秋風という異なるものが同じ夜の衣に届く対応となっている。
二句「夜の衣に」は、夜に着る衣、寝間着にの意である。
三句「香るなり」の「なり」は、においによって橘の存在を推し量る推定の助動詞で、ここで句切れとなる。
四句「もの思ふ宿の」は字余りで、思い悩む人の住む家をいう。
結句「軒の橘」は体言止めで、香りの主を最後に示す倒置となっている。前歌の第百六十首が雨の中で香る橘を詠んだのに続き、本歌では衣に香る橘を詠んでいる。
うたたね:寝床に入らず、ついうとうとと寝ること
ものおもふ:思い悩む、もの思いにふける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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いにしへを偲ぶとなしに故郷の 夕べの雨に匂ふ橘
- 次の歌
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袖濡れて今日葺く宿のあやめ草 いづれの沼に誰か引きけむ