袖濡れて今日葺く宿のあやめ草
いづれの沼に誰か引きけむ
- 歌の意味
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袖を濡らして今日軒に葺く家のあやめ草は、どこの沼で、誰が引き抜いてきたのだろうか。
- 鑑賞
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夏歌 162
詞書「五月雨降れるにあやめ葺くを」
五月雨の降る中、端午の節句にあやめ草を軒に葺くのを見て詠んだ歌である。袖を濡らして葺かれるあやめ草から、それを沼で引き抜いてきた人の苦労にまで思いを馳せている。
類従本では詞書を「五月雨降れるにあやめ草を見てよめる」とする。なお参照した底本の本文では四句に読み取れない字があり、定家所伝本の「いつれのぬまに」によって補った。
初句「袖濡れて」は、五月雨の中で作業をして袖が濡れることをいう。
二句「今日葺く宿の」の「今日」は五月五日の端午の節句で、あやめ草を軒に葺いて邪気を払う風習を示す。
三句「あやめ草」は、端午の節句に用いられるショウブである。次歌の第百六十三首は「菖蒲」を題とし、あやめ草の歌が二首続いている。
四句「いづれの沼に」は、どこの沼でという疑問を表す。
結句「誰か引きけむ」の「か」は疑問の係助詞で、過去推量の「けむ」の連体形で結ぶ。
あやめぐさ:ショウブ。端午の節句に軒に葺いて邪気を払った
ふく:屋根や軒に草などを差してふく
ひく:根から引き抜く
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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うたた寝の夜の衣に香るなり もの思ふ宿の軒の橘
- 次の歌
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五月雨に水まさるらむあやめ草 うれ葉隠れて刈る人もなし