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ゆかしくば行きても見ませゆき島の
巌に生ふる撫子の花

歌の意味
見たいと心ひかれるなら、行ってでも見てごらんなさい。ゆき島の岩の上に生えている撫子の花を。
鑑賞
夏歌 166

詞書「撫子」
 見たいと思うなら出かけて行ってでも見てほしいと、ゆき島の岩に咲く撫子の花を人に勧めた歌である。「行きても」と「ゆき島」の音を重ねる軽やかな調子で、岩に咲く可憐な花の美しさを伝えている。
 類従本ではこの歌を雑部に収める。

 初句「ゆかしくば」は、見たい、知りたいと心ひかれるならばの意である。
 二句「行きても見ませ」の「ませ」は尊敬の助動詞「ます」の命令形で、相手に勧める言い方であり、ここで句切れとなる。
 三句「ゆき島の」は、「行き」の意を響かせた地名で、二句の「行きても」と音を重ねている。所在ははっきりしない。
 四句「巌に生ふる」は、大きな岩に生えているの意で、硬い岩と可憐な花とを対照させる。
 結句「撫子の花」は体言止めで、勧める花を最後に示す。夏部ではこの歌のみが撫子を詠んでいる。

ゆきしま:地名とみられるが所在は未詳。「行き」の意を響かせる
いはほ:大きな岩
おふ:生える
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
五月山おぼつかなきを夕月夜 木隠れてのみ鹿や待つらむ
次の歌
小夜更けて蓮の浮き葉の露の上に 玉と見るまでやどる月影