古典和歌stream

岩くぐる水にや秋のたつた川
川風涼し夏の夕暮

歌の意味
岩の間をくぐって流れる水に、もう秋が立ったのだろうか。竜田川の川風が涼しい、夏の夕暮れに。
鑑賞
夏歌 168

詞書「河風似秋」
 夏の夕暮れに竜田川の川風が涼しく吹くのを、岩の間をくぐる水にもう秋が立ったのかと感じた歌である。題の「川風が秋に似る」を、紅葉の名所である竜田川の名に「秋立つ」を掛けて表している。
 「岩くぐる水」や竜田川の取り合わせは、『古今和歌集』の在原業平の「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」を思わせる。

 初句「岩くぐる」は、岩の間をくぐって流れるの意である。
 二句「水にや秋の」の「や」は疑問の係助詞で、水に秋が来たのかと問いかける。
 三句「たつた川」は、秋が立つ意と地名の竜田川を掛けた掛詞である。竜田川は紅葉の名所で秋を連想させる歌枕である。
 四句「川風涼し」は、川を吹き渡る風が涼しいと言い切り、ここで句切れとなる。
 結句「夏の夕暮」は体言止めで、まだ夏であることを示し、秋の気配との対照を際立たせる。次歌の第百六十九首以降、秋の近づきを感じ取る歌が続き、夏部が秋へと移ってゆく。

たつ:秋が立つ意と、地名の竜田を掛ける
たつたがは:大和国の川。紅葉の名所
くぐる:物の下や間をくぐり抜ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
小夜更けて蓮の浮き葉の露の上に 玉と見るまでやどる月影
次の歌
かきつばた生ふる沢辺に飛ぶ蛍 数こそまされ秋や近けむ