かきつばた生ふる沢辺に飛ぶ蛍
数こそまされ秋や近けむ
- 歌の意味
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かきつばたの生える沢のほとりを飛ぶ蛍は、数が増すばかりだ。秋が近いのだろうか。
- 鑑賞
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夏歌 169
詞書「蛍火乱飛秋已近といふ事を」
かきつばたの生える沢辺に飛び交う蛍の数が増えてゆくのを見て、秋が近いのだろうかと感じ取った歌である。題の「蛍火乱れ飛びて秋已に近し」を、蛍の数の増加から秋の訪れを推し量る形で詠んでいる。
この題は、『和漢朗詠集』の「蛍」の部に収められた白居易の詩句による句題である。底本の注記によれば、結句は貞享本では字句が異なり、類従本によって改めたもので、ここではその改訂に従う。なお参照した底本の本文では二句の頭に読み取れない字があり、定家所伝本の「おふるさはへに」によって補った。
初句「かきつばた」は、水辺に紫の花を咲かせるアヤメ科の草で、蛍の飛ぶ沢辺の景を彩る。
二句「生ふる沢辺に」は、かきつばたが生えている沢のほとりにの意である。
三句「飛ぶ蛍」は、題の「蛍火乱飛」を表す。
四句「数こそまされ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「まされ」で結び、逆接的に下へ続く。数は増すけれどの意となる。
結句「秋や近けむ」の「や」は疑問の係助詞で、「近けむ」と推量で結ぶ。前歌の第百六十八首の「秋」に続き、題の「秋已近」を表している。
かきつばた:アヤメ科の多年草。水辺に紫の花を咲かせる
さはべ:沢のほとり
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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岩くぐる水にや秋のたつた川 川風涼し夏の夕暮
- 次の歌
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夏山に鳴くなる蟬の木隠れて 秋近しとや声も惜しまむ