夏山に鳴くなる蟬の木隠れて
秋近しとや声も惜しまむ
- 歌の意味
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夏山で鳴いている蝉は木陰に隠れて、秋が近いというので、鳴く声までも名残惜しんでいるのだろうか。
- 鑑賞
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夏歌 170
詞書は前の歌に続き「蛍火乱飛秋已近といふ事を」
夏山の木陰で鳴く蝉の声に、秋が近いことを知って声を惜しむように鳴いているのだろうかと思いやった歌である。夏の盛りを過ぎて秋の気配が迫るなかで、限りある夏を惜しむ心を蝉の声に託している。
底本ではこの歌の前に新たな題が見えず、前歌の題のもとに置かれていると見て、詞書を前歌から続くものとした。定家所伝本では結句を「声も惜しまぬ」とし、声を惜しまずに鳴く意になる。なお参照した底本の本文では三句の頭に読み取れない字があり、定家所伝本の「こかくれて」によって補った。
初句「夏山に」は、青葉の茂る夏の山をいう。
二句「鳴くなる蟬の」の「なる」は音による推定の助動詞「なり」の連体形で、声によって蝉の存在を知ることを示す。
三句「木隠れて」は、木の陰に隠れての意で、本巻の第百四十九首のほととぎすと同じく、姿を見せずに声だけを響かせる。
四句「秋近しとや」の「や」は疑問の係助詞で、秋が近いと思ってかと問いかける。前歌の第百六十九首の結句「秋や近けむ」を受け、題の「秋已近」を引き継いでいる。
結句「声も惜しまむ」は「や」の結びで、推量の「む」の連体形で結ぶ。過ぎゆく夏を惜しむ心を蝉の声に重ねている。
こがくる:木の陰に隠れる
をしむ:名残惜しく思う、大切にする
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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かきつばた生ふる沢辺に飛ぶ蛍 数こそまされ秋や近けむ
- 次の歌
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泉川柞の森に鳴く蟬の 声の澄めるは夏の深さか