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秋近くなるしるしにや玉すだれ
小簾の間通し風ぞ涼しき

歌の意味
秋が近くなるしるしなのだろうか。玉すだれの小簾の隙間を通して、風が涼しく吹いてくる。
鑑賞
夏歌 173

詞書「水無月二十日余りのころ夕べの風簾動かすをよめる」
 陰暦六月二十日過ぎの夕べ、すだれを揺らして吹き込む風の涼しさに、秋が近づくしるしを感じ取った歌である。すだれ越しの風という室内の小さな変化から、季節の移ろいを繊細に捉えている。
 類従本では詞書の字句がやや異なる。底本の注記によれば、類従本と定家所伝本は三句を「玉だれの」とし、結句も字句が異なる。参照した底本の本文では結句に読み取れない字があるため、定家所伝本の「かせそすすしき」によって補った。

 初句「秋近く」は、本巻の第百七十首の「秋近しとや」と同じく、秋の近づきを詠み起こす。
 二句「なるしるしにや」の「や」は疑問の係助詞で、結びの語が省略されている。秋が近づくしるしなのだろうかの意で、ここで句切れとなる。
 三句「玉すだれ」は、玉で飾った美しいすだれをいい、すだれの美称である。
 四句「小簾の間通し」は、すだれの隙間を通しての意で、風の入り口を細やかに示す。
 結句「風ぞ涼しき」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「涼しき」で結ぶ。前歌の第百七十二首の夜の衣に吹く秋風に続き、本歌では夕べのすだれに吹く風を詠んでいる。

みなづき:陰暦六月
たますだれ:玉で飾った美しいすだれ。すだれの美称
こす:すだれ
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
夏深み思ひもかけぬうたた寝の 夜の衣に秋風ぞ吹く
次の歌
夏はただ今宵ばかりと思ひ寝の 夢路に涼し秋の初風