昨日まで花の散るをぞ惜しみこし
夢か現か夏も暮れにけり
- 歌の意味
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つい昨日まで花の散るのを惜しんできた。夢なのか現実なのか、もう夏も暮れてしまった。
- 鑑賞
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夏歌 175
詞書は前の歌に続き「夏の暮によめる」
つい昨日まで春の花が散るのを惜しんでいたのに、気づけばもう夏も終わってしまったと、時の流れの速さに驚く歌である。春の終わりから夏の終わりまでが一瞬のように感じられ、夢か現かとわからなくなるほどの思いを詠んでいる。
賀茂真淵はこの歌に合点を付している。底本の注記によれば、三句は貞享本では字句が異なり、類従本によって改めたもので、ここではその改訂に従う。
初句「昨日まで」は、つい昨日までの意で、春が過ぎてからの時の短さを強調する。
二句「花の散るをぞ」の「ぞ」は係助詞で、惜しんだ対象を強く示す。
三句「惜しみこし」は「ぞ」の結びの連体形で、ここで句切れとなる。夏部巻頭の第百三十三首の初句と同じ「惜しみこし」で、春を惜しんで始まった夏部が、同じ語で春を振り返りながら閉じてゆき、巻頭と巻末が呼応している。
四句「夢か現か」は、夢なのか現実なのかの意で、巻第一の第七十二首の「夢か現か」と同じ句であり、そこで散る桜に向けられた驚きが、本歌では過ぎ去った夏全体に向けられている。
結句「夏も暮れにけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、夏がもう終わってしまったことへの感慨を表す。
うつつ:現実、目覚めている状態
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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夏はただ今宵ばかりと思ひ寝の 夢路に涼し秋の初風
- 次の歌
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禊する川瀬に暮れぬ夏の日の 入相の鐘のその声により