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眺むれば衣手寒し夕月夜
佐保の川原の秋の初風

歌の意味
もの思いにふけって眺めていると袖が寒い。夕月の出ている夜、佐保の川原を吹く秋の初風よ。
鑑賞
秋歌 181

詞書「秋風」
 夕月の出た夜、佐保の川原をもの思いにふけって眺めていると、吹いてくる秋の初風に袖が寒く感じられると詠んだ歌である。前歌の朝の初風に対し、本歌は夕べの初風を詠み、同じ風を時を変えて捉えている。
 なお参照した底本の本文では三句に欠字があり、字数と語の続きから「ゆふづくよ」と解した。

 初句「眺むれば」は、もの思いにふけりながらじっと見ていると、の意で、「ば」は已然形に付いて偶然の条件を表す。
 二句「衣手寒し」は前歌の第百八十首の四句と同じ句で、ここで句切れとなる。前歌の朝の寒さを、本歌は夕べの寒さとして受けている。
 三句「夕月夜」は、夕方に出ている月、またその夜をいう。
 四句「佐保の川原の」は、大和国の佐保川の川原をいう。佐保は『万葉集』に多く詠まれた地である。
 結句「秋の初風」は前歌と同じ結句の体言止めで、巻頭の三首を貫いている。

ながむ:もの思いにふけりながらじっと見る
ゆふづくよ:夕方に出ている月、またその月の出ている夜
さほ:大和国(今の奈良市)の地名。佐保川が流れる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
昨日こそ夏は暮れしか朝戸出の 衣手寒し秋の初風
次の歌
夕されば衣手涼し高円の 尾上の宮の秋の初風