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夕されば衣手涼し高円の
尾上の宮の秋の初風

歌の意味
夕方になると袖が涼しい。高円山の峰の上に建つ宮に吹く、秋の初風よ。
鑑賞
秋歌 182

詞書は前の歌に続き「秋風」
 夕暮れになると、高円山の尾上の宮を吹く秋の初風に袖が涼しく感じられると詠んだ歌である。聖武天皇の離宮があったと伝えられる高円の地を詠み込み、万葉の古代をしのばせる大らかな調べで秋の訪れを描いている。
 この歌は『新勅撰和歌集』に入集しており、そこでは初句を「夕暮は」とする。賀茂真淵はこの歌に二つの合点を付している。類従本では二句を「衣手寒し」とし、参照した底本の本文ではこの異文が本文と並んで見えるため、注記に照らして「衣手涼し」とした。

 初句「夕されば」は、夕方になるとの意である。本巻の第百九十五首、第二百十四首、第二百二十三首、第二百三十六首も同じ初句で始まり、秋部では夕べの景を詠み起こす句として繰り返される。
 二句「衣手涼し」で句切れとなる。前の二首の「衣手寒し」に対し、本歌では「涼し」とし、寒さと涼しさとで秋の初風の感じ方を詠み分けている。
 三句「高円の」は、大和国の高円山をいう。
 四句「尾上の宮の」は、山の峰の上に建つ宮のことで、高円山にあった聖武天皇の離宮を指すと見られる。
 結句「秋の初風」で、巻頭から三首続いた同じ結句がここで締めくくられる。

たかまど:大和国(今の奈良市)の高円山
をのへ:山の峰、山の頂
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
眺むれば衣手寒し夕月夜 佐保の川原の秋の初風
次の歌
霧立ちて秋こそ空に来にけらし 吹上の浜の浦の潮風