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うちはへて秋は来にけり紀の国や
由良の岬の海人のうけ縄

歌の意味
一面に長く広がって、秋はやって来たのだ。紀の国の由良の岬で、海人が長く張り渡しているうけ縄のように。
鑑賞
秋歌 184

詞書は前の歌に続き「海辺秋来」
 紀伊国の由良の岬で、海人が長く張り渡すうけ縄のように、秋が辺り一面に広がってやって来たと詠んだ歌である。海辺の漁の道具を詠み込み、秋の到来の広がりを目に見える形で示している。
 なお参照した底本の本文では三句の頭に欠字があり、定家所伝本の「きのくにや」によって補った。

 初句「うちはへて」は、長く引き延ばして、ずっと続いての意で、結句の「うけ縄」とは長く延べるという点で縁語となる。
 二句「秋は来にけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、ここで句切れとなる。前歌の「秋こそ空に来にけらし」の推量を、本歌では「来にけり」と言い切っている。
 三句「紀の国や」の「や」は詠嘆の間投助詞で、前歌の吹上の浜に続いて紀伊国の海辺を詠む。
 四句「由良の岬の」は、紀伊国の由良の岬をいう。
 結句「海人のうけ縄」は体言止めで、漁のために海に長く張る縄を最後に示し、倒置によって初句の「うちはへて」の喩えのもとを明かしている。

うちはふ:長く引き延ばす、長く続ける
ゆらのみさき:紀伊国(今の和歌山県日高郡由良町)の岬
あま:海で漁をする人
うけなは:浮きをつけて海に長く張り渡す漁の縄
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
霧立ちて秋こそ空に来にけらし 吹上の浜の浦の潮風
次の歌
野となりて跡は絶えにし深草の 露の宿りに秋は来にけり