住む人もなき宿なれど萩の葉の
露を尋ねて秋は来にけり
- 歌の意味
-
住む人もいない家だけれど、萩の葉に置く露を訪ねて、秋はやって来たことだ。
- 鑑賞
-
秋歌 186
詞書は前の歌に続き「初秋の歌」
住む人もいない家であっても、萩の葉に置く露を訪ねるようにして秋はやって来たと詠んだ歌である。人に会いに来るのではなく露を訪ねて来る秋という見立てに、人のいない宿の寂しさと、変わらず巡る季節の律儀さが表れている。
定家所伝本では三句を「荻の葉の」とする。賀茂真淵は四句について、後世風の詠みぶりであると評している。なお参照した底本の本文では四句に欠字があり、定家所伝本の「つゆをたつねて」によって補った。
初句「住む人も」は、前歌の第百八十五首の「跡は絶えにし」を受け、人の住まない家であることを示す。
二句「なき宿なれど」の「ど」は逆接の接続助詞で、人もいない家だけれどの意となる。
三句「萩の葉の」は、秋の野を代表する萩の葉をいう。萩は本巻の第二百四首から多く詠まれる。
四句「露を尋ねて」は、露を訪ねての意で、秋を人のように見立てている。前歌の「露の宿り」の露を受けている。
結句「秋は来にけり」は前歌と同じ結句で、人のいない宿に秋が訪れる二首を結んでいる。
たづぬ:訪ねる、探し求める
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
野となりて跡は絶えにし深草の 露の宿りに秋は来にけり
- 次の歌
-
秋ははや来にけるものをおほかたの 野にも山にも露ぞ置くなる