今よりは涼しくなりぬひぐらしの
鳴く山陰の秋の夕風
- 歌の意味
-
今からはもう涼しくなった。ひぐらしの鳴く山陰に吹く、秋の夕風よ。
- 鑑賞
-
秋歌 188
詞書は前の歌に続き「白露」
ひぐらしの鳴く山陰に秋の夕風が吹き、今からはもう涼しくなったと感じた歌である。蜩の声と夕風という、耳と肌の感覚によって、季節が確かに秋へ移ったことを捉えている。
この歌は『続古今和歌集』に入集している。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。類従本ではこの歌を詞書を欠くものとして「一本及印本所載歌」の部に収める。
初句「今よりは」は、今からはの意で、季節の境目を示す。
二句「涼しくなりぬ」の「ぬ」は完了の助動詞で、涼しくなったと言い切り、ここで句切れとなる。
三句「ひぐらしの」は、晩夏から初秋の夕暮れに鳴く蝉で、次歌の第百八十九首の「山の蝉」へと続いている。
四句「鳴く山陰の」は、蜩の鳴く山の陰をいう。
結句「秋の夕風」は体言止めである。巻頭の三首の「秋の初風」が朝と夕べに吹いたのに続き、本歌では「秋の夕風」として風が再び詠まれている。
ひぐらし:蝉の一種。晩夏から初秋の夕暮れなどに、かなかなと鳴く
やまかげ:山の陰になった所
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
秋ははや来にけるものをおほかたの 野にも山にも露ぞ置くなる
- 次の歌
-
吹く風の涼しくもあるかおのづから 山の蝉鳴きて秋は来にけり