- 歌の意味
-
彦星が織女との逢瀬を待っている天の河原に、秋風が吹いている。
- 鑑賞
-
秋歌 194
詞書は前の歌に続き「秋のはじめによめる」
織女との年に一度の逢瀬を待つ彦星のいる天の河原に、秋風が吹いていると詠んだ歌である。七夕の近づきを、天上の河原を吹く秋風によって告げており、地上の秋と天上の恋とを一つの景に重ねている。
この歌は『新勅撰和歌集』に入集している。賀茂真淵はこの歌に二つの合点を付している。
初句「彦星の」は牽牛星のことで、七夕伝説で織女と年に一度逢う男星である。七夕の題の第百九十六首にも詠まれる。
二句「行き合ひを待つ」は、織女と行き逢う七夕の夜を待つの意である。
三句「久方の」は「天」にかかる枕詞である。
四句「天の河原に」は前歌の第百九十三首の二句と同じ句で、二首が同じ場を詠んでいる。前歌では地上の作者が秋を待ち、本歌では天上の彦星が逢瀬を待ち、待つ者が地上と天上とで対をなしている。
結句「秋風ぞ吹く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「吹く」で結ぶ。
ひこぼし:牽牛星。七夕伝説で織女と年に一度逢う
ゆきあひ:行き逢うこと、出会い
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
久方の天の河原をうち眺め いつかと待ちし秋も来にけり
- 次の歌
-
夕されば秋風涼したなばたの 天の羽衣たちやかふらむ