恋ひ恋ひて稀に逢ふ夜の天の川
川瀬の鶴は鳴かずもあらなむ
- 歌の意味
-
恋い慕い続けて、ようやくまれに逢う夜の天の川よ。その川瀬の鶴は、どうか鳴かずにいてほしい。
- 鑑賞
-
秋歌 197
詞書は前の歌に続き「七夕」
恋い続けてやっと逢えた七夕の夜、天の川の川瀬で鶴が鳴けば夜明けを告げて別れを急がせることになるので、どうか鳴かずにいてほしいと願った歌である。二星の短い逢瀬を惜しむ心を、鶴の声に寄せて詠んでいる。
なお参照した底本の本文では四句に欠字があり、定家所伝本の「かはせのたつは」によって補った。
初句「恋ひ恋ひて」は、恋い慕い続けての意で、一年待ち続けた思いの長さを示す。
二句「稀に逢ふ夜の」は、年に一度しか逢えない七夕の夜をいう。
三句「天の川」は本巻の第百九十六首の初句と同じ語で、七夕の舞台を示す。
四句「川瀬の鶴は」は、天の川の浅瀬にいる鶴をいう。
結句「鳴かずもあらなむ」の「なむ」は他に対する願望で、鳴かずにいてほしいと願う。次歌の第百九十八首では、反対に別れを惜しんで鶴も鳴いてほしいと願い、鳴かないでほしい願いと鳴いてほしい願いとで二首が対をなしている。
たづ:鶴
かはせ:川の浅瀬
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
天の川霧立ちわたる彦星の 妻迎へ舟はやも漕がなむ
- 次の歌
-
七夕の別れを惜しみ天の川 安の渡りに鶴も鳴かなむ