今はしも別れもすらし棚機の
天の河原に鶴ぞ鳴くなる
- 歌の意味
-
今はもう別れをするらしい。織女のいる天の河原で、鶴が鳴いているようだ。
- 鑑賞
-
秋歌 199
詞書は前の歌に続き「七夕」
天の河原で鶴の鳴く声が聞こえるので、今はもう二星が別れる時になったらしいと推し量った歌である。前の二首で鳴かないでほしい、また鳴いてほしいと願った鶴の声が、本歌でついに聞こえ、七夕の一連を締めくくっている。
類従本と定家所伝本では三句を「たなばたの」と仮名で記す。
初句「今はしも」の「しも」は強意で、今はもうの意となる。
二句「別れもすらし」の「らし」は根拠のある推定で、鶴の声を根拠に別れの時を推し量り、ここで句切れとなる。
三句「棚機の」は、機を織る織女をいう。
四句「天の河原に」は本巻の第百九十四首の四句と同じ句で、逢瀬を待つ秋風の吹いた河原が、本歌では別れの場となっている。
結句「鶴ぞ鳴くなる」は、係助詞「ぞ」を受けて音による推定の「なる」で結ぶ。前の二首の鶴が、本歌では実際に鳴く声として詠まれている。
たなばた:織女星。機を織る女とされる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
七夕の別れを惜しみ天の川 安の渡りに鶴も鳴かなむ
- 次の歌
-
天の原雲なき宵に久方の 月さへ渡るかささぎの橋