眺めやる軒のしのぶの露の間に
いたくな更けそ秋の夜の月
- 歌の意味
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眺めやる軒のしのぶ草に置く露のような、ほんのわずかの間に、そんなにひどく更けてくれるな、秋の夜の月よ。
- 鑑賞
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秋歌 202
詞書「七月十四日の夜勝長寿院の廊に侍りて月さし入りたりしによめる」
陰暦七月十四日の夜、鎌倉の勝長寿院の廊にいて、月の光が差し込んできたときに詠んだ歌である。軒のしのぶ草に置く露のはかなさに重ね、ほんのわずかな間にどうか夜が更けてしまわないでほしいと、秋の夜の月に呼びかけている。勝長寿院は源頼朝が父義朝の菩提を弔うために建立した寺で、この夜は盂蘭盆の前夜にあたり、作者は亡き人々をしのびつつ月を眺めていたとも見られる。
類従本では詞書の字句がやや異なる。底本の注記によれば、四句は原本では字句が異なり、校訂者が一本によって改めたもので、ここではその改訂に従う。なお参照した底本の本文では四句に欠字があり、定家所伝本の「いたくなふけそ」によって補った。
初句「眺めやる」は、遠くを見やるの意で、廊から月を見やる作者の姿を示す。
二句「軒のしのぶの」の「しのぶ」は、軒端などに生えるシダの一種のしのぶ草に、昔をしのぶ意を響かせている。
三句「露の間に」は、しのぶ草に置く露から、露のようにわずかな間にの意へと転じる。
四句「いたくな更けそ」は、「な…そ」の形で禁止を表し、ひどく更けてくれるなと月に呼びかけ、ここで句切れとなる。
結句「秋の夜の月」は体言止めで、呼びかける相手を最後に示す。本巻の第二百一首で傾いていった月に対し、本歌ではまだ更けないでほしいと月に願い、沈む月と引きとめる心とが対をなしている。
しのぶ:シダの一種、しのぶ草。「偲ぶ」の意を響かせる
つゆのま:露が置いているほどのわずかな間
らう:寺院や殿舎の廊下
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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秋風に夜の更けゆけば久方の 天の河原に月傾きぬ
- 次の歌
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野辺に出でてそぼちにけりな唐衣 着つつ分けゆく花の雫に