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夕されば野路の刈萱うちなびき
乱れてのみぞ露も置きける

歌の意味
夕方になると、野道の刈萱が風になびいて乱れ、その葉に露までも乱れて置いていることだ。
鑑賞
秋歌 214

詞書「野刈萱」
 夕方、野道の刈萱が風になびいて乱れ、その葉に置く露までも乱れて置いていると詠んだ歌である。風に揺れる秋草と露の乱れに、夕暮れの野の寂しさと、ひそかに乱れる心とが重ねられている。
 この歌は『新後撰和歌集』に入集している。類従本では詞書を「野辺の刈萱をよめる」とする。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。

 初句「夕されば」は本巻の第百八十二首、第百九十五首と同じ初句で、夕べの景を詠み起こす。
 二句「野路の刈萱」は、野の道に生える刈萱をいう。
 三句「うちなびき」の「うち」は接頭語で、風に吹かれてなびくさまをいう。
 四句「乱れてのみぞ」は、乱れてばかりの意で、係助詞「ぞ」が結句へかかる。刈萱は乱れるものとして詠まれることが多い。
 結句「露も置きける」は「ぞ」の結びの連体形で、「も」は刈萱だけでなく露までもの意を添える。前歌の第二百十三首の花薄に続き、本歌では刈萱を詠み、秋の野の草を並べている。

かるかや:イネ科の多年草。秋に穂を出す
のぢ:野の中の道
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
我のみやわびしとは思ふ花薄 ほに出づる宿の秋の夕暮
次の歌
藤袴着て脱ぎかけし主や誰 問へど答へず野辺の秋風