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鶉鳴く古りにし里の浅茅生に
幾夜の秋の露か置きけむ

歌の意味
鶉の鳴く古びた里の浅茅の原に、いく夜もの秋の露が置いてきたことだろうか。
鑑賞
秋歌 221

詞書「故郷の心を」
 鶉の鳴く荒れた古里の浅茅の原に、いったいいく夜の秋を重ねて露が置いてきたのだろうかと思いやった歌である。人の住まなくなった里に積み重なる歳月と、そこに置き続けた露の寂しさを詠んでいる。
 類従本ではこの歌を雑部に収める。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。「鶉鳴く」古里は、『伊勢物語』第百二十三段の深草の女の「野とならば鶉となりて鳴きをらむ」の歌を思わせる。

 初句「鶉鳴く」は、荒れた野で鶉が鳴くさまをいい、古里の荒廃を示す。
 二句「古りにし里の」は、古びてしまった里のの意で、本巻の第二百五首の「ふりにし里」と同じ語である。
 三句「浅茅生に」は、丈の低い茅が生えている所にの意で、荒れた地のさまを示す。
 四句「幾夜の秋の」は、いく夜もの秋のの意で、長い歳月の積み重ねを示す。
 結句「露か置きけむ」の「か」は疑問の係助詞で、過去推量の「けむ」の連体形で結ぶ。本巻の第百八十五首が荒れた深草の里の露の宿りに秋が来たと詠んだのを、本歌では幾夜もの秋の積み重ねとして詠んでいる。

うづら:キジ科の鳥。荒れた野で鳴くものとして詠まれた
あさぢふ:丈の低い茅が生えている所
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
風を待つ草の葉に置く露よりも あだなるものは朝顔の花
次の歌
久方の空飛ぶ雁の涙かも 大荒木野の笹の上の露