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雁のゐる門田の稲葉うちそよぎ
たそがれ時に秋風ぞ吹く

歌の意味
雁の降りている門前の田の稲葉がそよいで、たそがれ時に秋風が吹いている。
鑑賞
秋歌 224

詞書「田家夕雁」
 雁が降りている門前の田の稲葉がさやさやとそよぎ、夕暮れ時に秋風が吹いていると詠んだ歌である。田舎の家の夕暮れの静かな情景を、雁と稲葉と風とで描いている。
 賀茂真淵はこの歌に合点を付している。この歌は『金葉和歌集』の源経信の「夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろやに秋風ぞ吹く」を思わせる。なお参照した底本の本文では二句の末に欠字があり、字数と語の続きから「いなば」と解した。

 初句「雁のゐる」は、雁が田に降りているさまをいう。
 二句「門田の稲葉」は、家の門前にある田の稲葉をいい、題の「田家」を表す。前歌の第二百二十三首の「稲葉のなびく」を受けている。
 三句「うちそよぎ」の「うち」は接頭語で、稲葉が風にそよぐさまをいう。
 四句「たそがれ時に」は、夕暮れ時にの意で、題の「夕」を表す。本巻の第二百十二首の初句「たそがれに」と同じく、夕暮れの物寂しさを示す。
 結句「秋風ぞ吹く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「吹く」で結び、本巻の第二百十二首と同じ結句である。前歌で空を飛んでいた雁が、本歌では田に降りている姿で詠まれ、空と地上とで対をなしている。

かどた:家の門前にある田
いなば:稲の葉
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
夕されば稲葉のなびく秋風に 空飛ぶ雁の声も悲しや
次の歌
わたの原八重の潮路に飛ぶ雁の 翼の波に秋風ぞ吹く