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九重の雲居を分けて久方の
月の都に雁ぞ鳴くなる

歌の意味
幾重にも重なる雲の上の空を分けて、月の都で雁が鳴いているようだ。
鑑賞
秋歌 226

詞書「月前雁」
 幾重にも重なる雲の上の空を分けて進み、月の都で雁が鳴いているのが聞こえると詠んだ歌である。月の明るい夜空を渡る雁の声を、天上の月の都に響く声として幻想的に描いている。

 初句「九重の」は、幾重にも重なったの意で、宮中を指す語でもあり、次の「雲居」「都」と響き合う。
 二句「雲居を分けて」は、雲のある高い空を押し分けての意である。
 三句「久方の」は「月」にかかる枕詞である。
 四句「月の都に」は、月の中にあるとされる都をいう。本巻の第二百五十三首にも「月の都」が詠まれる。
 結句「雁ぞ鳴くなる」は、係助詞「ぞ」を受けて音による推定の「なる」で結ぶ。本歌から第二百三十首までの五首が「月前雁」の題で、月と雁を取り合わせている。前歌の海の上の雁に対し、本歌では月の都の雁を詠み、海と天とで対をなしている。

ここのへ:幾重にも重なっていること。また宮中
くもゐ:雲のある所、はるかな空
つきのみやこ:月の中にあるとされる都
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
わたの原八重の潮路に飛ぶ雁の 翼の波に秋風ぞ吹く
次の歌
鳴きわたる雁の羽風に雲消えて 夜深き空に澄める月影