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ぬばたまの夜は更けぬらし雁がねの
聞こゆる空に月傾きぬ

歌の意味
夜はすっかり更けたらしい。雁の声が聞こえる空に、月が傾いてしまった。
鑑賞
秋歌 230

詞書は前の歌に続き「月前雁」
 雁の声が聞こえる空に月が傾いたのを見て、夜がすっかり更けたらしいと知った歌である。月前雁の一連を締めくくり、夜更けの雁の声と沈みゆく月とで静かな時の流れを描いている。

 初句「ぬばたまの」は「夜」にかかる枕詞である。
 二句「夜は更けぬらし」の「らし」は根拠のある推定で、月の傾きを根拠に夜が更けたと推し量り、ここで句切れとなる。
 三句「雁がねの」は、雁の鳴き声、また雁そのものをいう。
 四句「聞こゆる空に」は、雁の声が聞こえてくる空にの意である。
 結句「月傾きぬ」は、本巻の第二百一首と同じ結句で、「ぬ」は完了の助動詞である。前歌の第二百二十九首で清き月夜に雁が渡った空に、本歌では月が傾き、月前雁の五首が月の傾きで閉じられている。

ぬばたまの:「夜」「黒」などにかかる枕詞
かりがね:雁の鳴き声。また雁
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
天の原ふり放け見ればます鏡 清き月夜に雁鳴きわたる
次の歌
雁鳴きて秋風寒くなりにけり ひとりや寝なむ夜の衣薄し