妻恋ふる鹿ぞ鳴くなる小倉山
山の夕霧立ちにけむかも
- 歌の意味
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妻を恋い慕う鹿が鳴いているようだ。小倉山の、山の夕霧が立ちこめたのだろうか。
- 鑑賞
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秋歌 235
詞書「鹿の歌に」
妻を恋い慕って鳴く鹿の声が聞こえてきて、小倉山に夕霧が立ちこめたのだろうかと思いやった歌である。霧に閉ざされて妻の姿を見失った鹿が、声を限りに妻を呼んでいるさまを思い描いている。
類従本では詞書を「鹿をよめる」とする。賀茂真淵はこの歌に合点を付している。底本の注記によれば、貞享本では結句を「たちけんかも」とするが誤りであろうとされ、ここでは底本の本文に従う。
初句「妻恋ふる」は、妻を恋い慕うの意で、秋に雌を求めて鳴く牡鹿をいう。
二句「鹿ぞ鳴くなる」は、係助詞「ぞ」を受けて音による推定の「なる」で結び、ここで句切れとなる。本歌から第二百四十四首までの十首が鹿を詠み、「鹿ぞ鳴くなる」の句は本巻の第二百三十六首、第二百三十七首、第二百三十八首、第二百四十首、第二百四十三首、第二百四十四首の結句にも繰り返される。
三句「小倉山」は、山城国の嵯峨にある山で、鹿の名所である。次歌の第二百三十六首も同じ小倉山を詠む。
四句「山の夕霧」は、三句の「小倉山」の「山」を重ねて調子を整えている。
結句「立ちにけむかも」の「けむ」は過去推量、「かも」は詠嘆を込めた疑問で、夕霧が立ったのだろうかと推し量る。
をぐらやま:山城国(今の京都市右京区嵯峨)の山。鹿の名所
つまこふ:妻を恋い慕う
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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雁がねは友まどはせり信楽や 真木の杣山霧立たるらし
- 次の歌
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夕されば霧立ちくらし小倉山 山のとかげに鹿ぞ鳴くなる